借家権とは借地借家法(旧借家法)が適用される建物の賃借権のことです。
借家権は、賃借権の登記(民法第605条)又は建物の引渡し(借地借家法第31条第1項)により対抗要件を具備し、契約の解約には、賃貸人側に「正当事由」が必要となります。
借地借家法28条
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
〇借家家の価格
〈借家権の取引慣行がある場合〉
・比準価格(標準)
・自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除した価格(比較考量)
・借家権割合(比較考量)
一般的に、借家権が取引されている市場は存在しません。
民法上は「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」
と定められています。(第612条第1項)
賃貸人としては、賃借人の属性を信用して契約しています。賃貸人が属性の知らない第三者への転貸を容認するケースは稀であるため、借家権の市場は存在していません。
(注意)
財産評価基本通達 94(借家権の評価)における借家権割合は相続税等の資産評価のための評価割合であり、この割合をもって市場価格とはいえません。
〈賃貸人から立退きの要求を受けた場合〉
・新規の支払賃料 - 現在の支払賃料 × 一定期間 + 一時金(敷金・礼金)
・自用の建物及びその敷地の価格 - 貸家及びその敷地の価格
上記の試算価格を関連付けて決定します。
借家権の市場がないので、借家権の価格は上記の試算により求めることになります。
つまり、賃貸人の事情により、立退きの要求を受けたとき顕在化する価値といえます。
〇立退料とは
借家権価格が権利に対する対価のであるのに対して、立退料は補償に対する対価といえます。
補償の内容としては
・借家人補償(借家権価格)
+
・工作物補償
・営業休止補償
・動産移転補償
・移転雑費補償
などがあります。
立退料は借家権価格の他に、立退きによって生じる損失についても査定しています。
補償の算出方法については、用途(住居、事務所、店舗等)により異なります。
損失補償基準などを参考にします。