不動産の世界では、「相場」などの言葉があるとおり、感覚や雰囲気で値付けする慣習があります。この相場観は、特定の地域で日々売買や仲介を経験することによって形成されます。いわゆる感覚の世界なので、感じ方や好き嫌いによって左右されてしまうので、答えにばらつきが生じます。
不動産業界は個人情報の関係もあり、他業界に比べるとやや遅れ気味ですが、情報はどんどんオープンになっていきます。今まで感覚で行ってきた値付けの世界も、ちゃんとした根拠を示すことが求められます。
特別な技術やソースがなくても、オープンソースを活用し、基本的な統計の手法を活用することで、十分説得力のある資料を作成することができます。
〇どのような場面で活用できるか
不動産の評価をする際に活用できます。大手の不動産業者や金融機関であれば、不動産評価システムなども導入しているため、査定書の作成は容易ですが、小規模の企業においてはそのような環境もないため、エクセルで査定書を作成しているケースも多いいと思われます。
評価以外においても、プロポーザルやプレゼンテーションの資料作成においても、統計的手法を活用することで信頼度が向上します。
〇どのようなツールが必要か
エクセルがあれば、基本的な分析は十分です。
大量のデータベースやグラフィック、高度な分析をしたい場合などは、AccessやRなどの統計ソフトを活用する必要があります。但し、これらのツールを利用する場合は、ある程度の専門的な技術が必要になります。
〇どのような準備が必要か
STEP1 データベースの作成
エクセルで作成します。
手順としては行にタイトル、列にデータを入力します。
分析する際に一番重要なことが、分析対象となるデータを整備することです。個人では限界があるかもしれませんが、情報をエクセルにまとめることからはじめます。
今回は、住宅地にある更地について、価格と駅距離、道路付の相関関係を調べることを前提とします。
STEP2 データベース作成のポイント
データの作成は置かれた環境により異なりますが、不動産のポータルサイトやレインズなどから対象地周辺の宅地開発が行われた販売図面を収集します。
なぜ宅地開発が行われた販売図面が必要かというと、分析する要因が駅距離と道路付だからです。角地の効用がどの程度聞いているのかは同じ分譲地内にある中間画地と角地を比較することが効果的だからです。

データベース作成の前提条件:
①道路付は中間画地か角地のみ。二方路地や三方路地はなかった。
②データには量的データと質的データがあります。駅距離は量的データでそのまま入力できます。
道路付けは質的データになるので、該当する場合「1」を非該当の場合「0」を入力します。これをダミー変数といいます。

STEP3 エクセルの準備
エクセルで統計分析するためには初期設定が必要になります。

STEP4 基本統計量
まずはデータを俯瞰するために、各変数の平均値や中央値を求めます。
注)基本統計量の調査は量的データのみです。ここでは、価格と駅距離が対象となります。

STEP5 単回帰分析
価格と駅距離など、価格と要因との一対一の相関関係を調べる方法が単回帰分析です。
価格:y 駅距離:x とした場合の単回帰式は
y = ax + b
となります。
グラフ上では直線になります。
価格を目的変数、駅距離などの要因を説明変数といいます。
aは傾き、bは切片になります。aは統計的に偏回帰係数(以下「係数」)といいます。
データさえあれば、単回帰分析の計算は簡単です。

STEP6 重回帰分析
価格と駅距離、道路付、用途地域、幅員など、価格と要因との一対多の相関関係を調べる方法が重回帰分析です。
価格:y 駅距離:X1 中間画地:X2 角地:X3とした場合の重回帰式は
y = β0 + β1・X1 + β2・X2 + β3・X3 、、、、
となります。
要因が複数あるため二次元のグラフでは表示することができません。
※統計ソフトを活用することで三次元での表示などが可能となります。
価格を目的変数、駅距離などの要因を説明変数といいます。
β0は定数項(切片)、β1、β2、、は係数です。
データさえあれば、重回帰分析の計算は簡単です。
