個人が実物の不動産で店舗経営する場合の職種は一般的に飲食、小売業等が多数を占めます。その中でも個人経営しやすい、つまり参入障壁の低い職種は飲食業になります。
飲食に関しては、駅周辺の好立地でも数年もするとテナントが入れ替わっている事が多く、データで検証する必要もないくらい、参入と退出が頻繁に繰り返されている厳しい業界です。
飲食店の賃料支出の割合は、売上の概ね10%前後であり、立地条件にこだわるとこの割合が高くなります。しかも、賃料は固定費になりますので、売り上げの多寡にかかわらず、毎月一定の支出が計上されます。また、売り上げが低い事を根拠に、賃料の値下げ交渉をすることは難しく、店舗の賃料が周辺の相場水準並であれば、値下げ交渉はほとんど不可能でしょう。賃貸借契約書にも経済事情の変動が伴う場合は賃料改定は可能である旨記載されることが多いですが、店舗経営事態に問題があるようなケースでは、該当しません。但し、契約自由の原則もあることから、不動産オーナーと個人的に良好な関係が築いているようなら、話し合いで、店舗経営を建て直す半年間だけ、賃料の30%を減額してもらうとかの交渉の余地はあります。ですので、日頃から不動産オーナーとは良好な関係を構築するよう心がけておく必要があります。
いずれにしろ、実物不動産で店舗を構えようとする場合、平日のランチ、アフターの飲酒飲食、週末のファミリー等をターゲットにすることが中心になるため、人流や交通量等の導線が重要になり、立地条件にこだわれば必然と賃料支出の割合が高くなります。
そこで、実物店舗を構える、オーソドックスなやり方、つまりレッドオーシャンで勝負するか、少し切り口を変えて、競争の少ないブルーオーシャンを探すかを起業する前によく検討する必要があります。
実物不動産を必要としない店舗経営として考えられるのが、楽天、Amazon、BASE等のネット店舗がありますが、これらは小売りが中心であり、飲食では使えません。
車を利用する移動販売も不動産を必要としませんが、狭義の意味合いでは不動産が必要になります。移動販売用の車両を設置する場所の確保が必要になるからです。移動販売のプラットフォーム(Mellow、自由市場等)を活用すれば、出店場所の確保は以前と違いあまり難しくないかもしれません。しかし、無料で出店場所を提供してくれるわけではないので、詳細は各プラットフォームのサイトを参照してほしいのですが、固定費として売り上げの一部を支出する必要があり、これでは通常の実物不動産を利用した出店方法と差別ができていません。
そこで、リヤカー等を活用する行商という方法がどうか検討してみたいと思います。行商というと、昔ながらの豆腐屋、富山の薬売りのおばあちゃんなんかを想像しそうですが、最近の行商が扱う商品は多岐に渡ります。フルーツサンドやシフォンケーキ等の洋菓子、おにぎり、団子等の和菓子等をみかけることもあります。特にコロナ禍においては、外出の自粛に伴い、オフィスや家で食事をする事が定着したため、行商等の移動販売にはチャンスかもしれません。
AIが普及する中で、多くの知識産業が終焉を迎えることが予想される中、あえてAIにできない領域を探すのも手です。そういう意味において、人が動く職業というのはこれからも残り続ける可能性が高く、あえてこの時代に行商という飲食業のブルーオーシャンに挑戦する価値は高いとみています。副業としてもよさそうです。時間ができる夕方以降、週末等の時間を自由に選択できます。リヤカーと体力、保健所の営業許可、10万円程度の初期投資があれば、誰でも参入できる市場です。営業許可、行商で取り扱える商品、リヤカー等の代金は保健所のHP等各サイトで確認できます。
例えば、みたらし団子専門の行商を検討した場合の収支計画を検討してみます。
〇イニシャルコスト:ざっくり10万円
〇ランニングコスト(1回の売上目標を200本、単価70・100円で設定)
・団子粉 30袋(団子15~20g/個、1本/70g、200本/1400g、だんご粉155円/250g)
・しょうゆ1リットル
・さとう500g
・みりん0.5リットル
・水 7リットル
※作業時間2時間程度
注意:リサーチ時点価格、スーパー等の小売店により異なります。
仕入れ方法を工夫すれば、原価率はもっと低くなります。
〇売り上げ
単価70円の場合 | |||||||||||
収入:200本×70円=14,000円 | |||||||||||
支出:約5,500円(原価率39%) | |||||||||||
収益:14,000円-5,000円=8,500円
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