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不動産コストを圧縮して自由を手に入れるには

〇収入に占める不動産コストの割合

令和3年度住宅市場動向調査報告書(国土交通省)によると、住宅ローン年間返済額は、全国平均で139.4 万円。家賃の平均は月額75,259円(年額903,108円)となっている。

 

かたや、2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)によると、2021(令和3)年の1世帯当たり平均所得金額は、全世帯平均で 545 万 7 千円。

 

所得から税金や保険等を控除した手取りは

5,457,000円×0.85≒464万円

 

収入に占める不動産コストの割合は、全国平均ベースで、住宅ローンで30%、家賃で20%である。

 

実に、国主導の夢のマイホーム作戦に乗っかると、手取り収入の30%が不動産コストとして消えるのである。マイホームをあきらめたとしても、家賃負担は20%である。

 

この他、自動車の維持費、保険、教育、医療、食費、衣服、娯楽等に収入は消えていき、まともに貯金できる状況にあるとは思えない。よく言われる、人生を不動産に全ベッドする不動産投資をしている状況にある。

〇2極化の影響

更に追い打ちをかけるのが、都心部を中心とした地価と建設物価の高騰である。

 

日銀総裁は交代したものの、金融緩和政策は維持されており、短期金利は低金利の状況が継続している。長期金利は現時点(2023/8)においては若干の上昇傾向にある。

 

低金利を背景に、一般の住宅実需、不動産投資ともに購入意欲は旺盛で、コロナ過以降地価は上昇傾向である。

 

建設物価については、建設物価調査会の統計データが参考になる。

2015年を基準(100)に建築費の指数をみると、2023/6時点の指数は集合住宅(鉄筋コンクリート造)は123.3、住宅(木造)131.5という暫定値になっている。堅固非堅固とも約8年の間に2~3割建築費が上昇しており、今後円安、インフレ傾向が継続すると、更に上昇する可能性は高い。

 

但し、地価に関しては2極化の傾向も見られ、都心部や地方4市以外の地方エリアについては、地価も下降しており、地域によっては、高い建築費をエンドの販売価格に価格転嫁できない地域もある。

 

過去のブログ「インフレ時代の不動産投資について検討する」参照

〇空家の増加、2極化が強くなる

平成30年住宅・土地統計調査(総務省)によると、空家数は848万9千戸あり、総住宅数は6240万7千戸に占める割合は約14%。日本の人口は2008年に12808万人、世帯数は2014年に4,929万世帯でピークをむかえ、以降減少傾向にある (国立社会保障・人口問題研究所)。

 

人口と世帯数の推移は東京都と地方で異なり、東京都発表の予測結果をみると、人口は2025年に1417.1 万人、世帯数は2035年に723.7 万世帯でピークをむかえる。

 

全国平均と東京都の予測結果の差異からもわかるように、都心部以外の地方ではすでに人口、世帯数の減少が始まっており、東京都では今のところまだ増加傾向にある。

 

空家の比率も東京都や大阪府などの都市圏においては5%以下と低く、地方圏の比率が高い。これは、都市圏においては、賃貸需要が強いためである。

 

生産年齢人口の現象、少子高齢化の影響もあり、社会保障費等の財政負担が増す中、これまでのような公共事業のあり方も見直され、インフラコストの負担軽減等の必要性から、地方都市においてはコンパクトシティ化せざるを得ない状況にある。

 

人口世帯数とも減少傾向にあり、空家も増加傾向にあることから、不動産余りが生じており、今後もその傾向が強くなることが予想される中、地価の2極化傾向はより鮮明になる。

〇コロナ禍で実証された、出社しない働き方

新型コロナの影響で働き方改革が進み、在宅や好きな場所で働くリモートワークやサテライトオフィス等を活用してオフィス機能を分散化する流れが生じた。

 

国内総生産(実質)の対前年度比をみると、第1波が生じた2020年度は-4.1%、2021年度+2.6%、2022年度+1.4%と個人消費、輸出、企業の設備投資等が下落したため、2020年度は大きく落ち込んだものの、2021年度以降は回復傾向にあり、コロナ前の水準に戻っている。

 

リモートワークに適さない特定の業種以外は、リモートワークの普及による生産性の低下はないとみられ、満員電車や交通渋滞の回避、無駄な会議や打ち合わせの回避、人間関係のストレス回避など、GDPには現れない部分で、生産性を向上する要素が強い。

 

リモートワークは具体的に生産する能力(稼ぐ力)がないとやることがなくなる仕組みだ。必要な報告、連絡、相談は基本、メールやチャット機能で済ませれば、時間を効率的に使えるし、無駄なおしゃべりや無駄な会食も回避でき、健康の増進にも繋がる。ただ単に印鑑を付くだけではやることがなくなるのだ。

〇メタバースとは

最近よく耳にするメタバースとは、インターネット上の仮想空間にことである。世界的なオンラインゲームである「フォートナイト」などは具体的な例かもしれない。自分のアバターを用いて仮想空間で戦うシューティングゲームで、このアバターを用いて、仮に会議や商品の購入を行えば、メタバースといえる。

 

リモートワークはメタバースの先駆けになっていると思う。ZOOMなどを利用したミーティングなども、あれをリアルではなくアバターでやればメタバースになるからである。

 

無駄なオフィス賃料、無駄な人間関係、無駄な満員電車等を回避する意味でも、今回のコロナをきっかけに上手に働き方をシフトできる企業が、WEB3.0へ移行できる企業といえるのではないか。人類が疫病を克服できてない現状においては、次のコロナがいつくるか分からない不安定な状況にあり、ある意味コロナは続ているのである。

〇地方へ

不動産価格の高騰、地価の2極化、オフィスを必要としない働き方改革、メタバース等々からみえるのは、必要な不動産は都心部の一極に集中し、人口密度の低い地方の不動産は、コンパクトシティによるインフラの削減により、人口は減少する。地方や利便性の低い郊外の不動産価格は、限りなくゼロに近くなり、最早固定資産税等の維持費を考慮すれば、不動産の価値という意味においてはマイナスになる世界が既に始まっている。

 

これから選択するのは、あえて賃料の高い都心部でオフィスや住居をかまえるのか、逆に、リモートワークが可能であれば、タダ同然の地方に住居をかまえるかということである。

〇生活費を限りなく圧縮

地方の田舎で、出社しない働き方を選択すれば、衣服も自由で、高いランチや会食もなくなり、周囲に高所得者が少ないため、無駄な承認欲求からも解放され、車も軽自動車でよくなり、産地直送で食材も安く手に入る。水道光熱費はそれほど変わらないかもしれないが、生活費は都心に比べて大幅に圧縮できるだろう。

 

田舎住まいでは家はあえて購入しない方が賢明だろう。月1万円でも固定資産税の足しになれば空家にしておくよりはマシというのが所有者の本音である。実際は維持管理さえしてくれるのなら無料でもよいという物件もあるだろうし、今後は増えていくだろう。

 

このような無料の賃貸物件をマッチングしてくれる不動産業者があってもおもしろい。仲介手数料以外のところでマネタイズを考える必要はあるだろうが、インバウンドに伴う民泊需要等ポテンシャルの高い地域、物件はあるはずだ。

〇余剰金は投資へ自由を手に入れよう

昨今FIREという生き方が持て囃されてる。自己投資や副業による収入の増加、断捨離やミニマリストに代表される支出削減、投資等の運用による利回り増加。若いうちから、分散、長期、低コストで運用することで、40~50代で1億円以上の資産を確保した後は、配当金で収入を確保し早期リタイヤを実現して自由な生き方を選択する。

 

収入、支出、利回りの3要素の中で、誰でもが実行可能なものが、支出の削減である。収入や利回りについては、本人の実力や努力はさることながら、運の要素も重要になってくるからである。支出は違う。支出は我慢できれば誰でもできるのである。断捨離やミニマリストは我慢というよりは哲学、スタイル、趣味に近い感覚といえる。

 

不動産という人生最大の支出を減らすことが、ある意味、最も効率的で最もスタイリッシュな生き方なのかもしれない。くだらない承認欲求などさっさと捨てて、田舎へ行こう!